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組織に変化をもたらすための4冊+1 〜Fearless Change(翻訳版)の出版に寄せて〜

書籍"Fearless Change: Patterns for Introducing New Ideas"の日本語訳が出版され、ありがたいことに献本をいただきました。翻訳者にはアジャイル界隈で日頃お付き合いをいただいている方々の名前が並んでいます。

原著は Mary Lynn Manns, Ph.D. と Linda Rising, Ph.D.による名著で、2004年に出版されています。それが10年の月日を経て、待望の日本語版が出版されたということです。私自身もこの本は既に原書で読んでいましたが、日本語版についても改めて目を通しています。
そういえば、今の会社に入る時のインタビューで「何をやりたいのか?」と聞かれて、「組織のtransformationをやりたい」と答えたことを思い起こすとともに、今まさにこの本を読み返す必要が出てきたタイミングで日本語版が出版されたのも何かの縁と思っています。

Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターン

Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターン

組織に変化をもたらすための4冊

さて、この書籍自体については、いろんなところで既に書かれていると思いますので、ここではこの本を含めて、組織に変化をもたらすことを考える時に参考になる書籍を4冊ほど紹介しておこうと思います。

Leading Change

Leading Change

Influencer: The Power to Change Anything

Influencer: The Power to Change Anything

  • 作者: Kerry Patterson,Joseph Grenny,David Maxfield,Ron McMillan,Al Switzler
  • 出版社/メーカー: McGraw-Hill
  • 発売日: 2007/08/22
  • メディア: ハードカバー
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Switch: How to Change Things When Change Is Hard

Switch: How to Change Things When Change Is Hard

Fearless Change: Patterns for Introducing New Ideas

Fearless Change: Patterns for Introducing New Ideas

そしてさらに1冊と言えば…

Jurgen Appelo氏が前述の4冊にインスパイアされて書いた小冊子が"How to Change the World"です。日本語版は達人出版会のページからどうぞ。

"The Healthy Programmer"を読み始めている

あまりにもBlogをサボっていて書き方を忘れてしまいそうだし、またいつも本は読み終わってから書評っぽいBlogを書こうとして読んでいるうちにその気がなくなってしまうということも続いているので、とりあえずこの本については読み始めの段階でなんか書いておこうと思います。

The Healthy Programmer: Get Fit, Feel Better, and Keep Coding (Pragmatic Programmers)

The Healthy Programmer: Get Fit, Feel Better, and Keep Coding (Pragmatic Programmers)

健康って大事だね、と思ってからどうするか?

読み始めたきっかけは、確かtwitterかなんかでたまたまこんな本が出ていることを知ったからなのですが、その前からいろんなことが自分の周りで起きていて、やっぱり仕事をするに当たって(当たり前だけど)健康って大事だね、と思っていたことも背景にあります。
で、誰もが「健康って大事だね」なんてことはわかっていると思うのですが、なかなか生活習慣を変えられなかったりしているのが現実です。そこでどうやって生活習慣を変えて「健康なプログラマー」を目指すかというのが本書のテーマです。

健康な生活に向けたアジャイルなアプローチ

この本は、意外にもちゃんとした学術的な根拠や理論に基づいて書かれているっぽいのですが、本文はあまり堅苦しくなく、参照文献などもいちいち示すのではなく巻末にまとめて挙げておくに留めるなど、読みやすくする工夫をしてあります。そのため、特に医学や脳科学やその他さまざまな前提知識というのはあまり必要とされません。
しかしながら、プログラム開発やシステム開発プロジェクト、特にアジャイル開発についての前提知識があると非常に理解しやすく、また楽しんで読めると思います。目次をざっと眺めてみるだけでも、それは容易に想像できると思います。

組織を変えるための個人レベルの変革にも通じる

…などと言ったらいいすぎでしょうか?でも、一人一人の習慣や行動を変えることは組織を変えていく上でも重要なことであり、その個人レベルの変革を促す科学的アプローチを知っておくことはとても役に立つと思います。
そうです、この本は"transformation"について書かれた本でもあるのです。

Let's refactor your health.

「ワークショップデザイン論」を読んで

私自身は、研修やセミナーなどで行われるワークショップが苦手です。もちろん、よく考えられて運営されたワークショップで多くの気づきを得る場合もあるにはあります。しかし、なんとなく「ワークショップ的な」ことで適当に時間を埋められたり、なんとなく「座学だけではなく体験型の研修を演出してみました」的なものに付き合わされている感があったり…そんなワークショップも少なくなく、そんな時は疲労感しか残りません。

というわけで、「ワークショップ」と聞くと「面倒くさいなー」「普通に座学させてくれないかなー」とか思ってしまうわけです。(それとは少し違いますが、「パネルディスカッション」という言葉にも似たような感覚を持ってしまうことも多いです。)

そんな私ですが、別にだからと言ってワークショップそのものが悪いとは思っておらず、それがちゃんと「デザイン」されていないというところが問題なのだろう…と思うくらいには大人になりました。

そして、

が出版されると聞いたときには早速予約して、今、手元に置いて読んでいるわけです。

で、この本は、良いです。

理論と実践のバランス

帯には「ワークショップ実践の必携書」というフレーズが踊っていますが、いわゆる実践面のみにフォーカスした「How-To本」ではありません。かと言って、研究者が理論面でのみ書いている本でもありません。理論的バックグラウンドをしっかり押さえつつ、実践の場での事例など含めて具体的なワークショップについても述べており、そのバランスがとてもよい感じです。

理論でときほぐし実践へ

この本を読んでいると、冒頭に述べたようないわゆる「ワークショップに対する漠然とした不満や違和感」の正体がなんとなく理論的に解きほぐされていくように感じます。まぁ、確かにそうだよね、と。その上で、じゃあどうしたらいいのか?自分がワークショップをデザインする時にこれから何をどう考えるべきなのか?そんなことを考えさせられるわけです。これは楽しみでもあり、プレッシャーでもあります。

これからワークショップのデザインや運営などに携わろうとしている人にはおすすめの一冊です。

ワークショップデザイン論―創ることで学ぶ

ワークショップデザイン論―創ることで学ぶ

書籍:"IMPACT MAPPING"

引き続き、最近読んだ書籍から。今日のお題は、Gojko Adzic氏の[www.amazon.co.jp/dp/0955683645:title="IMPACT MAPPING"]です。これは80ページほどの薄い本で、それほど難しいことが書かれているわけでもありません。
実は、そのエッセンス的なことは以下のサイトにもまとめられており、サンプルも見ることができます。

IMPACT MAPとは何か

書籍のp.2には以下のような定義が載っています。

An impact map is a visualisation of scope and underlying assumptions, created collaboratively by senior technical and business peope. It is a mind-map grown during a discussion facilitated by answering the following four questions: WHY? WHO? HOW? WHAT?

要するに、GOAL(WHY?) - ACTORS(WHO?) - IMPACTS(HOW?) - DELIVERABLES(WHAT?)の階層で描かれたマインドマップといった感じでしょうか。

シンプルなツールでコミュニケーションを促進する

IMPACT MAPのよいところは、非常にシンプルであるということ。
実際に何かのツールを使って、ステークホルダーの合意形成をしたり、プロダクト/プロジェクトの定義をしたりする際に大切なのは、ツール自体がシンプルであるということだと思います。ツール自体がシンプルであるが故に、誰もがその検討プロセスに参加することができるし、ツールの習得そのものにコストをあまりかけることなく、実質的な中身の議論にフォーカスできるからです。
その意味では、このIMPACT MAPはかなり優れたもののような気がしています。

要求開発との親和性も高い?

かもしれませんね。
そのあたりをやる時のひきだしの一つに入れておきましょう。

Impact Mapping: Making a Big Impact with Software Products and Projects

Impact Mapping: Making a Big Impact with Software Products and Projects

プロダクト合気道(Product Aikido)

CPA GlobalのHead of Product Development FlowであるBob Marshall氏(twitterのアカウントで、 @flowchainsenseiと呼んだ方が馴染み深いかもしれません)が、CPA GlobalのProduct Developmentのマニュアルを公開しました。そのタイトルが"Product Aikido"です。
簡単な説明は、彼のブログエントリーをご参照ください。そこからpdfファイルをダウンロードして読むことができます。

これがなかなか私のツボにハマったので、簡単にご紹介しておきます。

書いたのはRightshiftingやMarshall ModelのBob Marshall

いまさらBob Marshall氏についての説明などは不要だと思いますが、代わりに過去のこのブログで彼に関連したエントリーも書いていますので、ここにリンクを貼っておきます。

その彼が、プロダクト開発の社内マニュアルを書いて公開したというのだから、それだけで期待が高まりますよね。そして、まだ斜め読みしただけですが、期待を裏切らない内容です。

マニュアルというよりフィロソフィ(哲学)

彼はこの中でこの"Product Aikido"を指すのに、"Philosophy"とか"Doctrine"という言葉を使っています。なのでこれは単なるマニュアルというよりは、「プロダクト開発のこころ」とも言えるようなものではないかと思います。
というわけで、4章からなる全体の構成も、

  1. The Nature of Product Development
  2. The Theory of Product Development
  3. Preparing for Product Development
  4. The Conduct of Product Development

というように、プロダクト開発って何やねん?というところから始まっています。

なぜ「合気道」?

"Product Aikido"という名前にした理由については、末尾の奥付に以下のように説明されています。

The author chooses the name "Product Aikido" to reflect the role of spirit, especially harmony, which lies at the centre of effective product development. We might serve our purposes better if we regard entropy not an enemy, but rather as a wayward friend, with whom nevertheless we choose to dance.

が、もうちょっとイメージしやすいところでいえば、第1章にある以下の部分が、合気道のメタファーを使っている箇所としてわかりやすいかもしれません。

Product Development is fundamentally an interactive social process. We might imagine a randori situation (freestyle Aikido training) with a uke (receiver) and nage (thrower), each attempting moves and countermoves to try to defeat the other. Product development is thus a process of continuous adaptation to events, of give and take, simultaneous synthesis and dissolution.

心構えの書

つまり、これはプロダクト開発に取り組む上での「心構え」を記したものであるというのが私の印象です。したがって、前書きでも書かれているように、リファレンスマニュアルのように使うのではなく、最初から最後までじっくりと読んでみるのがよいのだと思います。
というわけで、昨日のエントリー(「オブジェクト指向のこころ」)に続く"こころ"シリーズ第2弾でした。

オブジェクト指向のこころ

今日は、今(今更ながら)読んでいる本について紹介したいと思います。
その本とは、

です。
本書は、原書が2001年(その後、Second Editionが2004年)に出版されており、訳書も2005年発売ですので、それほど新しい本ではありません。また、私自身は設計をしたりプログラムを書いたりということから離れて久しいので普段であれば手に取ることはないような部類の書籍ですが、とある場で羽生田さんにおすすめされて手に取った次第です。

著者はAlan ShallowayとJames R. Trott

この名前を聞いてピンと来る人はピンと来るでしょうが、"Lean-Agile Software Development: Achieving Enterprise Agility"の共著者のうちの二人ですね。この本やAlanたちの考え方については、以前のブログにも書いていますのでご興味があればどうぞ。

プログラマーじゃなくても興味深く読める

まだ第5章までしか読んでいないのですが、少なくともここまでは私でも興味深く読み進めることができました。ここまでの部分でざっと、オブジェクト指向のおさらいをし、従来のオブジェクト指向設計における限界を示した上で、デザインパターンの有効性を示すところにつなげています。
第6章以降は、さまざまなパターンを紹介しているのですが、そんな中でも随所に差し込まれている内容には、プログラマーでなくてもためになる話が含まれています。例えば、第8章の「8.6 アジャイル開発における品質」など。
そして、今の時期ならオブジェクト指向を改めてしっかり学びたい新入社員のエンジニアのみなさんにもちょうど良いかもしれません。

そんなこんなで、たまにはこんな本を読んでみるのもいいものです。

デザインパターンとともに学ぶオブジェクト指向のこころ (Software patterns series)

デザインパターンとともに学ぶオブジェクト指向のこころ (Software patterns series)

Design Patterns Explained: A New Perspective on Object-Oriented Design (Software Patterns Series)

Design Patterns Explained: A New Perspective on Object-Oriented Design (Software Patterns Series)

Lean-Agile Software Development: Achieving Enterprise Agility (Net Objectives Lean-Agile Series)

Lean-Agile Software Development: Achieving Enterprise Agility (Net Objectives Lean-Agile Series)

JurgenのManagement 3.0コースの開催について

先日、Scrum Alliance Regional Gathering Tokyo 2013にJurgen Appelo氏が来日するということで紹介記事を書きました。

本日は、そのJurgenが世界各地で開催し好評を得ているManagement 3.0コースが日本でも開催されるという話のご案内です。(特に私自身が当研修の運営に直接関わっているわけではありませんけど。)

開催概要

  • 日付: 2013年1月17日(木)〜18日(金) : 2日間
  • 時間: 10:00 〜 18:00
  • 開催場所: 株式会社 VOYAGE GROUP 会議室パンゲア ( 〒150-0045 東京都渋谷区神泉町8-16 渋谷ファーストプレイス8F )
  • 価格: 20万円
  • 主催: アギレルゴコンサルティング株式会社

詳細については、以下のサイトをご覧ください。

アジャイルなマネジメント

Jurgenの言うManagement 3.0についての話や、「アジャイルなマネジメント」について考える必要性については、以前のエントリにも書いています。

対象者はマネジメント層だけではない

マネジメントの研修ではありますが、対象はいわゆるマネージャ層だけではないと考えています。
私自身はJurgenの考え方は、植物を育てるように人やチームを育てる考え方だと理解しています。つまり、植物そのものに働きかけるのではなく、土を耕したり水をやったり日当りを確保したり…。人そのものではなく人のまわりにある「システム」に働きかけるという考え方です。
ですので、自分が働くチームを少しでもよくしていきたいと思うメンバーやチームリーダーにとっても得るものは大きいと思います。
また、その根底にある複雑適応系への関わり方とシステム開発の関係などは、アジャイルな開発のフレームワークやプロセス、プラクティスの適用などを考える上でも非常に参考になると思いますので、ご興味のある方は是非参加をご検討ください。


Management 3.0: Leading Agile Developers, Developing Agile Leaders (Addison-Wesley Signature Series (Cohn))

Management 3.0: Leading Agile Developers, Developing Agile Leaders (Addison-Wesley Signature Series (Cohn))