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Apologies, Glances and Messed Up Chances

「ワークショップデザイン論」を読んで

私自身は、研修やセミナーなどで行われるワークショップが苦手です。もちろん、よく考えられて運営されたワークショップで多くの気づきを得る場合もあるにはあります。しかし、なんとなく「ワークショップ的な」ことで適当に時間を埋められたり、なんとなく「座学だけではなく体験型の研修を演出してみました」的なものに付き合わされている感があったり…そんなワークショップも少なくなく、そんな時は疲労感しか残りません。

というわけで、「ワークショップ」と聞くと「面倒くさいなー」「普通に座学させてくれないかなー」とか思ってしまうわけです。(それとは少し違いますが、「パネルディスカッション」という言葉にも似たような感覚を持ってしまうことも多いです。)

そんな私ですが、別にだからと言ってワークショップそのものが悪いとは思っておらず、それがちゃんと「デザイン」されていないというところが問題なのだろう…と思うくらいには大人になりました。

そして、

が出版されると聞いたときには早速予約して、今、手元に置いて読んでいるわけです。

で、この本は、良いです。

理論と実践のバランス

帯には「ワークショップ実践の必携書」というフレーズが踊っていますが、いわゆる実践面のみにフォーカスした「How-To本」ではありません。かと言って、研究者が理論面でのみ書いている本でもありません。理論的バックグラウンドをしっかり押さえつつ、実践の場での事例など含めて具体的なワークショップについても述べており、そのバランスがとてもよい感じです。

理論でときほぐし実践へ

この本を読んでいると、冒頭に述べたようないわゆる「ワークショップに対する漠然とした不満や違和感」の正体がなんとなく理論的に解きほぐされていくように感じます。まぁ、確かにそうだよね、と。その上で、じゃあどうしたらいいのか?自分がワークショップをデザインする時にこれから何をどう考えるべきなのか?そんなことを考えさせられるわけです。これは楽しみでもあり、プレッシャーでもあります。

これからワークショップのデザインや運営などに携わろうとしている人にはおすすめの一冊です。

ワークショップデザイン論―創ることで学ぶ

ワークショップデザイン論―創ることで学ぶ

プロダクト合気道(Product Aikido)

CPA GlobalのHead of Product Development FlowであるBob Marshall氏(twitterのアカウントで、 @flowchainsenseiと呼んだ方が馴染み深いかもしれません)が、CPA GlobalのProduct Developmentのマニュアルを公開しました。そのタイトルが"Product Aikido"です。
簡単な説明は、彼のブログエントリーをご参照ください。そこからpdfファイルをダウンロードして読むことができます。

これがなかなか私のツボにハマったので、簡単にご紹介しておきます。

書いたのはRightshiftingやMarshall ModelのBob Marshall

いまさらBob Marshall氏についての説明などは不要だと思いますが、代わりに過去のこのブログで彼に関連したエントリーも書いていますので、ここにリンクを貼っておきます。

その彼が、プロダクト開発の社内マニュアルを書いて公開したというのだから、それだけで期待が高まりますよね。そして、まだ斜め読みしただけですが、期待を裏切らない内容です。

マニュアルというよりフィロソフィ(哲学)

彼はこの中でこの"Product Aikido"を指すのに、"Philosophy"とか"Doctrine"という言葉を使っています。なのでこれは単なるマニュアルというよりは、「プロダクト開発のこころ」とも言えるようなものではないかと思います。
というわけで、4章からなる全体の構成も、

  1. The Nature of Product Development
  2. The Theory of Product Development
  3. Preparing for Product Development
  4. The Conduct of Product Development

というように、プロダクト開発って何やねん?というところから始まっています。

なぜ「合気道」?

"Product Aikido"という名前にした理由については、末尾の奥付に以下のように説明されています。

The author chooses the name "Product Aikido" to reflect the role of spirit, especially harmony, which lies at the centre of effective product development. We might serve our purposes better if we regard entropy not an enemy, but rather as a wayward friend, with whom nevertheless we choose to dance.

が、もうちょっとイメージしやすいところでいえば、第1章にある以下の部分が、合気道のメタファーを使っている箇所としてわかりやすいかもしれません。

Product Development is fundamentally an interactive social process. We might imagine a randori situation (freestyle Aikido training) with a uke (receiver) and nage (thrower), each attempting moves and countermoves to try to defeat the other. Product development is thus a process of continuous adaptation to events, of give and take, simultaneous synthesis and dissolution.

心構えの書

つまり、これはプロダクト開発に取り組む上での「心構え」を記したものであるというのが私の印象です。したがって、前書きでも書かれているように、リファレンスマニュアルのように使うのではなく、最初から最後までじっくりと読んでみるのがよいのだと思います。
というわけで、昨日のエントリー(「オブジェクト指向のこころ」)に続く"こころ"シリーズ第2弾でした。

オブジェクト指向のこころ

今日は、今(今更ながら)読んでいる本について紹介したいと思います。
その本とは、

です。
本書は、原書が2001年(その後、Second Editionが2004年)に出版されており、訳書も2005年発売ですので、それほど新しい本ではありません。また、私自身は設計をしたりプログラムを書いたりということから離れて久しいので普段であれば手に取ることはないような部類の書籍ですが、とある場で羽生田さんにおすすめされて手に取った次第です。

著者はAlan ShallowayとJames R. Trott

この名前を聞いてピンと来る人はピンと来るでしょうが、"Lean-Agile Software Development: Achieving Enterprise Agility"の共著者のうちの二人ですね。この本やAlanたちの考え方については、以前のブログにも書いていますのでご興味があればどうぞ。

プログラマーじゃなくても興味深く読める

まだ第5章までしか読んでいないのですが、少なくともここまでは私でも興味深く読み進めることができました。ここまでの部分でざっと、オブジェクト指向のおさらいをし、従来のオブジェクト指向設計における限界を示した上で、デザインパターンの有効性を示すところにつなげています。
第6章以降は、さまざまなパターンを紹介しているのですが、そんな中でも随所に差し込まれている内容には、プログラマーでなくてもためになる話が含まれています。例えば、第8章の「8.6 アジャイル開発における品質」など。
そして、今の時期ならオブジェクト指向を改めてしっかり学びたい新入社員のエンジニアのみなさんにもちょうど良いかもしれません。

そんなこんなで、たまにはこんな本を読んでみるのもいいものです。

デザインパターンとともに学ぶオブジェクト指向のこころ (Software patterns series)

デザインパターンとともに学ぶオブジェクト指向のこころ (Software patterns series)

Design Patterns Explained: A New Perspective on Object-Oriented Design (Software Patterns Series)

Design Patterns Explained: A New Perspective on Object-Oriented Design (Software Patterns Series)

Lean-Agile Software Development: Achieving Enterprise Agility (Net Objectives Lean-Agile Series)

Lean-Agile Software Development: Achieving Enterprise Agility (Net Objectives Lean-Agile Series)

人間の脳を活用せよ [Management 3.0 Course by Jurgen Appelo]

今週は、Scrum Alliance Regional Gathering Tokyo 2013に2日間参加、その後2日間のManagement 3.0研修に参加というスケジュールでさまざまな刺激を受けた1週間でした。その中でまずは、Jurgen Appelo氏によるManagement 3.0研修について簡単に書き留めておきたいと思います。はい、本当に簡単に書きますよ。
なぜならば、ワークショップ/エクササイズを含めた2日間の濃い内容を私の拙い文章力では何をどうしても伝えきれないから。そして、有償の研修ですので、次回の開催があった場合にみなさんに是非わくわくした期待を持ったまま参加していただきたいからです。

複雑適応系に対処するには?

ソフトウェア開発やそのチームが複雑適応系(CAS: Complex Adaptive System)であるということはよく言われています。では、それに対処できるマネジメントとはなにか?複雑なものには何をもって立ち向かえばいいのか?というのがこのコースの中心テーマであったと私は考えています。

必要多様度の法則と必要複雑度の法則

そのコアをなす法則が、William Ross Ashbyの「必要多様度の法則」(The Law of Requisite Variety)であり、それを組織にあてはめた場合の「必要複雑度の法則」(The Law of Requisite Complexity)です。
では、必要多様度の法則とはどんなものかというと、一言で言えば、

Only variety can absorb variety.

ということであり、Anthony Stafford Beerは、物理学者にとってアインシュタイン相対性理論が重要なのと同じくらいに、このアシュビーの必要多様度の法則はマネージャにとって重要なものであると言っているらしいです。
それをシステムや組織に適用してみると、

The complexity of a system must be adequate to the complexity of the environment that it finds itself in.

となります。変化する環境の中で生存していくためには、それと同等の複雑度を自己のうちに持たなければならないということですね。

複雑性に複雑性をもって対処するには?

つまり、複雑なものに対処するためには複雑なもので立ち向かうしかないというわけですが、では我々の武器はなんでしょうか?それが人間の「脳」です。
脳は他のどんなツールよりも複雑です。
ならばそれを活かそうではないか、ということです。そのためのマネジメントの考え方が"Management 3.0"です。
「ルールをつくる」というのは、ある意味、人間が自分で考えるという行為(すなわち「脳」をつかうということ)のスイッチをOFFにしているのに等しいと考えられます。それはもったいないですね。

さまざまなワークショップ/エクササイズ

ということで、上に書いたようなことを6つの視点に整理したものを理解し、体感するというのが今回の研修です。その個々の内容については触れませんが、工夫されたワークショプやエクササイズについて、簡単にイメージだけ写真で紹介しておきたいと思います。
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こんな感じです。今回は通訳を介しての研修ということもあり、時間の関係でいくつかのエクササイズはスキップしていましたが、それでも十分なエクササイズがあり、Management 3.0の世界を体感できました。
で、ケチケチ言わずにもうちょっとワークの内容とか教えてよ!という方のために、同じく研修に参加されていた椿さんのブログへのリンクを勝手に貼り付けておきますね!

まとめ

というわけで、アジャイルなチームをどうやって育てていけばいいか?とか、どうやってアジャイルな組織に変革していけばいいのか?とか悩んでいる人、あるいは自分のチームをもっとよくしていきたいと考えているメンバー、どなたにとってもとても役立つ研修コースだったと思います。
その他、もうちょっと何か聞きたいとかいうことがあれば、またお会いした時にでもお気軽に声をかけていただければできる範囲でお話させていただきます。お会いする予定のない方は、飲みに誘ってください。


Management 3.0: Leading Agile Developers, Developing Agile Leaders (Addison-Wesley Signature Series (Cohn))

Management 3.0: Leading Agile Developers, Developing Agile Leaders (Addison-Wesley Signature Series (Cohn))

  • 作者: Jurgen Appelo
  • 出版社/メーカー: Addison-Wesley Professional
  • 発売日: 2010/12/28
  • メディア: ペーパーバック
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JurgenのManagement 3.0コースの開催について

先日、Scrum Alliance Regional Gathering Tokyo 2013にJurgen Appelo氏が来日するということで紹介記事を書きました。

本日は、そのJurgenが世界各地で開催し好評を得ているManagement 3.0コースが日本でも開催されるという話のご案内です。(特に私自身が当研修の運営に直接関わっているわけではありませんけど。)

開催概要

  • 日付: 2013年1月17日(木)〜18日(金) : 2日間
  • 時間: 10:00 〜 18:00
  • 開催場所: 株式会社 VOYAGE GROUP 会議室パンゲア ( 〒150-0045 東京都渋谷区神泉町8-16 渋谷ファーストプレイス8F )
  • 価格: 20万円
  • 主催: アギレルゴコンサルティング株式会社

詳細については、以下のサイトをご覧ください。

アジャイルなマネジメント

Jurgenの言うManagement 3.0についての話や、「アジャイルなマネジメント」について考える必要性については、以前のエントリにも書いています。

対象者はマネジメント層だけではない

マネジメントの研修ではありますが、対象はいわゆるマネージャ層だけではないと考えています。
私自身はJurgenの考え方は、植物を育てるように人やチームを育てる考え方だと理解しています。つまり、植物そのものに働きかけるのではなく、土を耕したり水をやったり日当りを確保したり…。人そのものではなく人のまわりにある「システム」に働きかけるという考え方です。
ですので、自分が働くチームを少しでもよくしていきたいと思うメンバーやチームリーダーにとっても得るものは大きいと思います。
また、その根底にある複雑適応系への関わり方とシステム開発の関係などは、アジャイルな開発のフレームワークやプロセス、プラクティスの適用などを考える上でも非常に参考になると思いますので、ご興味のある方は是非参加をご検討ください。


Management 3.0: Leading Agile Developers, Developing Agile Leaders (Addison-Wesley Signature Series (Cohn))

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Jurgenがやってくる ヤア!ヤア!ヤア!

既にみなさんご存知のことと思いますが、Scrum Alliance Regional Gathering Tokyo 2013にJurgen Appelo氏がやってきます。
というわけで、予習エントリでございます。

まず一冊読むなら"Management 3.0"

とりあえず読んでおきたいのは、"Management 3.0"ですね。これは良い本。

Management 3.0: Leading Agile Developers, Developing Agile Leaders (Addison-Wesley Signature Series (Cohn))

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日本語でお手軽に読みたいなら

そうは言っても洋書はちょっと…という、そこのあなた!
そんなあなたのために、ワンコインで買えるお手軽な翻訳書が電子書籍で出ています。

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これは、買って読むしかないですね。

その他

これまた英語になっちゃいますが、このあたりは追いかけておくといいですね!

TwitterFacebookでは、Jurgen本人のアカウントだけでなく、以下もチェックです。

そしてみんなでJurgenに会いに行こう!

"Scrum Alliance Regional Gathering Tokyo 2013"は、年明けすぐの2013年1月15日〜16日の2日間開催で、現在チケット絶賛発売中らしいです。

アジア諸国でのアジャイル開発普及と人材教育

ひきつづき、Agile Tour Osaka 2012 in Minohの告知ブログです。前回のエントリの時点では、まだ長瀬さんの講演タイトルと概要が公式に発表されていませんでしたが、数日前にようやく公表されました。

アジア諸国でのアジャイル開発普及と人材教育

これが、長瀬さんの講演タイトルです。そして概要は、こんな感じ↓

欧米諸国では、アジャイル開発はメインストリームとして当たり前になりましたが、日本での普及は10%にもなりません。日本では、従来型にしがみつきアジャイル開発の普及が進みません。その裏では、日本のソフトウェア開発は、日本からアジアの新興国へシフトしだしています。
それでは、アジア諸国でのアジャイル開発の普及はどうなっているのでしょうか。とりわけ、中国、ベトナム、タイのアジャイル開発事情と人材教育の現場の話をいたします。

これを聴いて何を感じるか、何を考えるか

それはまさに参加者次第です。
オーガナイザーとして、長瀬さんに講演を依頼する立場として期待しているのは、これが単にアジア諸国のお話として捉えるのではなく、参加者ひとりひとりが今後の自分自身のエンジニアあるいはビジネスパーソンとしての生き方を考えるきっかけになればいいな、ということ。
その意味では、私自身が勝手にこのイベントの「裏テーマ」と考えている「会社に頼らない働き方、日本に縛られない生き方」を考える上での直接的ではないかもしれないけれどもさまざまなヒントを与えてくれるセッションになるのではないかと思っています。