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経験学習とプロジェクトマネージャの育成

昨日、ふとしたことからダイヤモンド・オンラインで神戸大学の松尾睦先生の記事を見かけました。これって、今まで全くフォローできていなかったのですが、昨年秋からの連載だったのですね。というわけで、今さらながら第1回から読み直しています。

シリーズ「経験から学ぶ力」

私が最初に松尾さんに興味を持ったのは、2009年の「学習する病院組織ー患者志向の構造化とリーダーシップ」という書籍が最初です。病院組織から、IT組織やプロジェクト、あるいはアジャイルな組織づくりについてのヒントが得られるのではないかという観点で読んでみました。(この話については、いずれどこかで書くかもしれませんし、書かないかもしれません。)


次に松尾さんの著作に触れたのは、当時所属していた会社において「プロジェクトマネージャの育成」をどうするか悩んでいた時に上司から「経験からの学習-プロフェッショナルへの成長プロセス-」を勧められた時です。この中ではPMとコンサルタントの熟達プロセスや経験学習パターンについて、実際の調査に基づいて書かれています。この内容については、PMと対比したコンサルタント育成の観点からではありますが、井上実氏が@ITにいくつか関連記事を書かれていますので、まずはそちらを読んでみて、興味があれば書籍の方にも手を伸ばしてみることをおすすめします。
PMとコンサルタントの現状と育ちの違い − @IT情報マネジメント
コンサルタントを育成するためには − @IT情報マネジメント


で、ITプロジェクトマネージャの育成についてですが、これってとても難しいのですよ。単にPMBOKを勉強してPMPの資格を取れば優秀なPMとしてプロジェクトを成功に導けるかというと、そんな単純なものではありません。逆に、PMBOKを体系的に勉強していなくても優秀なプロジェクトマネージャもたくさんいます。そこら辺を解きほぐすヒントが、「経験学習」という概念にあるような気がしています。優秀なPMになるためには、まず「場数を踏む」こと、そしてその経験を自らの学習につなげることが必要です。優秀なPMが多く育つ組織は、意識する・しないに関わらず「経験学習」を促進する環境が整っているのだと思いますし、逆に、そこを意識していくことによって優秀なPMを輩出する環境も(ある程度までは)作り出せるのではないかと考えます。そういう意味で、IT組織での人材育成、とくにPMの育成について考えるにあたっては、松尾さんの研究は要チェックです。


学習する病院組織―患者志向の構造化とリーダーシップ

学習する病院組織―患者志向の構造化とリーダーシップ

経験からの学習-プロフェッショナルへの成長プロセス-

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「経験学習」入門

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