Always All Ways

Apologies, Glances and Messed Up Chances

カンファレンス再考

ここ1週間ほどのうちに、Jurgen Appelo氏とBob Marshall氏が立て続けに「カンファレンス」のあり方について考察・提言するブログを書いています。
Jurgenの記事
What If We Started Organizing *Real* Conferences? - Agile Management | NOOP.NL
Bobの記事
Better Conferences « Think Different

IT系に限らず国内においても、カンファレンスやセミナーその他さまざまな形でのイベントが開催されています。どういう形でそれをオーガナイズしていくかというのはその文脈や目的にしたがって考えればよいというのは言うまでもありません。
ただ一方で、「カンファレンス」と称した場合にはそれなりのやり方があるはずで、その原点に返って考えるとどうなるかというのが二人のエントリに共通したテーマです。私自身もAgile Tour Osakaのオーガナイザーをやったり、その他イベントで企画・運営に関わったりすることもありますので、ここで、二人の示唆を受け止めながら少し考えてみたいと思います。

"Conference"の本来の意味

ConferとかConferenceという語は、"to bring together"という意味を表すラテン語に源流を持ちます。そこから考えると、「カンファレンス」というのは、さまざまな意見を持ち寄って比べたり相談・議論するという色合いが強いと考えられます。(つまり、たくさんの人を集めて一方的なプレゼンテーションをしたり聴いたりというのはカンファレンスではないということですね。)

Jurgenの課題認識

その点に関して、Jurgenはいくつかの課題認識を示しています。

  • 議題に関して、実行委員会などが一方的に決めてアナウンスするのではなく、自己組織化された参加者に議題決定を権限委譲すべきじゃないか?
  • 講演者が一方的に聴衆にプレゼンテーションするのではなく、双方向のコミュニケーションがもっと必要なのでは?
  • 空調の効いたホテルの会議場とかでやるのが本当にいいの?レストランやバー、カフェなどでよりよい相互作用が働くのをみんな知ってるんじゃないの?
  • オーガナイザーが勝手に見積もって決めた定員に合わせて会場をセッティングし、それで先着順に参加者を決めるのは変じゃない?早く申し込んだ人よりも価値のある人と議論したいんじゃないの?

うむ。そりゃそうですよね。どの意見も、ごもっともです。
しかし、実際の運営を考えるとなかなかそれらを解決するソリューションを見出せないというのが現状で、今のいわゆる「カンファレンス」はあくまでも「きっかけづくり」の場でありさらに進んだ実質的な意見交換や議論などは参加者各自の個別の活動に委ねられているのではないかと思います。

"not a gathering of uninformed enthusiasts"

もうひとつ、Jurgenのエントリの中であまり目立たない書き方でたった2行書かれている文章が、私はとても重要な文章を含んでいるような気がします。

I hope, someday, to be part of a conference that is not merely a show of well-prepared speakers. And also not a gathering of uninformed enthusiasts.

もちろん、その目的や趣旨に沿って、ある一定のテーマ(言語であったり方法論であったり思想であったり)の熱心な信者(?)を集めて議論を深めるというのも否定はしませんが、個人的にはやはり「○○万歳」的なノリが最近ますます苦手になりつつあります。ある程度クリアにテーマを設定しつつも、そこに多様な見方や考え方をいかに注入していけるかというのが、これからのカンファレンスの課題ではないかと思います。

"Ignorance Backlog"の活用

Bobもそのエントリの中で同様の課題(ただ、より幅広く詳しく記述しているので、是非原文の"Problem"の節をご参照ください)を示すとともに、その解決策に関していくつかの示唆をしています。

  • 参加者各自が事前に"ignorance backlog"を作り、カンファレンスを通じてそれを進化させること
  • 知識は参加者の"ignorance backlog"に基づいてオンデマンドで専門家(subject expert)から"PULL"されること
  • セッションは、時間・場所・参加者の空きや優先順位に基づいて、On-the-Fly(カンファレンス開催中に即興)でオーガナイズされること

これらを実現するのはなかなか難易度が高そうですが、ここで提唱されている"ignorance backlog"のアイデアはいいですね。何らかの形で今後取り入れていきたいと思います。