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DisciplineとInstitutionalization

アジャイル開発への取り組みに関して、現場メンバーとユーザ/顧客は前向きだけれども、情報システム部門も含めた社内マネージャ層が支持してくれないという話を良く聞きます。過去、自分の組織の中でのアジャイル開発(Scrum)の導入・展開を推進してきた経験をふりかえってみても、一番説得・突破が難しいのは、情報システム関連の他リーダや品質・リスク管理関連部門などのいわゆる「中間管理職層」であったような気がします。

なぜ彼らは反対するのか?

答えは簡単です。それが彼らの仕事だ(と思っている)からです。
現場メンバーは、変化への反応は人それぞれですが、自分たちがよりよいやり方にトライできるならば比較的柔軟に対応していく傾向があります。また、トップマネジメントやユーザ部門は、よりよい商品やサービスが生み出せたり、Time-to-Marketが短縮できたりすることの方にフォーカスする傾向があるため、その点でのメリットを説明することで突破可能です。
一方で、情報システム関連あるいは周辺関連部門のマネージャの関心事はなんでしょうか?彼らは、例えば

  • 自部門のプロセスを把握し、適切にコントロールしていることや上司に説明できることを期待されている
  • リスクや品質、監査の観点で社内プロセスの明文化・制度化を求められている

といった環境下にあり、またそれが自分自身の存在価値であると考えています。従って、彼らに対してはこのあたりの観点でどうなのかというのを説明できることが求められます。そこで鍵になってくるのがDiscipline(規律)Institutionalization(制度化)という概念です。

DisciplineとIBMのDisciplined Agile Delivery

まず、Discipline(規律)です。
そもそもアジャイル開発チームには、ある面ではトラディショナルな開発チームより厳しい規律が求められます。しかし、それをいくら説明しても中間管理職層にはなかなか響きません。なぜなら、それがSelf-Disciplineの色合いが濃く、マインドセットの変化を伴わないと理解しづらい部分があるからです。
その点で、最近あらためて見直しているのが、IBMのDisciplined Agile Delivery (DAD)という考え方です。
DADの全体像については例えばここからホワイトペーパーをダウンロードして読んでみるとよいでしょう。
Disciplined Agile Delivery: An Introduction white paper (Agility@Scale: Strategies for Scaling Agile Software Development)
そしてその背景にある、アジャイル開発におけるDisciplineについて、2007年の記事ですがこの記事がとてもよいことを書いているような気がします。
The Discipline of Agile | Dr Dobb's

InstitutionalizationとCMMI

Institutionalization(制度化)については、特に金融庁の監督下にあり検査対象となる金融機関などの場合に重要になってきます。また、それに限らず組織外のステークホルダーに対しての説明可能性を担保するためには、一定レベルでの制度化が必要であり、アジャイルと制度化のバランスをとっていく必要があります。
この点については、CMMIと組み合わせて、その相互作用で説明していくというのが一つのソリューションであると考えます。
古くは、Jeff Sutherlandほかの"Scrum and CMMI Level 5: The Magic Potion for Code Warriors"という論文が有名ですね。
Scrum and CMMI Level 5 The Magic Potion for Code Warriors pdf free ebook download from www.sitaware-sse.com
この中で3. Guide for mixing CMMI and Agile 3.1. How CMMI can improve Agileにいろいろなヒントがあります。
また、私も出版直後に斜め読みしたまま放置していますが、"Integrating CMMI and Agile Development"という書籍にもケーススタディを含めていろいろと書かれています。

まとめ

アジャイル開発導入に際して反対・抵抗勢力になりがちな中間管理職層にもそれぞれの立場や理屈があります。その中でキーワードとなるものを2つ挙げるとしたら、私は"Discipline(規律)"と"Institutionalization(制度化)"を挙げます。これらに対する不安と不満に対して、彼らの理解しやすい言葉で(あるいは彼らがさらに外部ステークホルダーに説明しやすい言葉で)説明してあげることと、場合によってはCMMIなどのフレームワークを援用して自社のプロセスを補強して安心させてあげることが必要です。


Integrating CMMI and Agile Development: Case Studies and Proven Techniques for Faster Performance Improvement (SEI Series in Software Engineering)

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