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But...Self-Organization Is Not Enough: 自己組織化チームに関する誤解とマネージャの役割

Agile Book Management

アジャイル開発の文脈において、自己組織化されたチームという概念がよく出てきます。これはアジャイルなマネジメントを考える上でポイントとなる一つの大きな概念である半面、誤解(時によっては過大評価)されていたり、またそれが故にマネージャの役割が過小評価されているようなことも起きているのではないかと思います。

"But...Self-Organization Is Not Enough"というのはこのブログでも再三取り上げているJurgen Appeloの"Management 3.0"の第8章のある一節の見出しになっているフレーズです。この書籍では、第6章(The Basics of Self-Organization)でも1章を割いてSelf-Organizationの理論的背景や類似概念との比較などがされており、とても参考になります。このエントリでは、そこから私がポイントと思うところを適宜抜粋しながら、自己組織化について考えてみたいと思います。

自己組織化そのものに良いも悪いもないわけで…

まず、自己組織化のそもそもの意味はなんでしょう?Wikipediaを見ると以下のような説明がされています。

自己組織化(じこそしきか、Self-organization、Self-assembly)とは、自然と秩序が生じて、自分自身でパターンのある構造を作り出して、組織化していく現象のことである。自発的秩序形成とも言う。自己組織化は、身近な自然現象の中に潜んでいて、幾何学的な形状を持つ雪の結晶の成長や、孔雀の羽に浮かび上がるフォトニック結晶構造に由来する模様や、シマウマのゼブラ模様、心臓の鼓動など、さまざまなものの中に見出すことができる。生物がDNAを設計図として、自ら機能を持った組織をつくり出す現象も、高度な自己組織化の結果と考えられている。
自己組織化 - Wikipedia

つまり、生命の誕生からなにからして、自己組織化というのは自然界に自然に現れるものであり、別に特殊なものではないということですかね。ならばなぜ、アジャイル開発でこれほど「自己組織化」ということがあたかもそれがベストプラクティスの一つかのように語られたり特別視されたりするのでしょう?裏返せば、なぜそれに相対するようなCommand and Control型のMicro Managementが世の中にはびこっているのでしょうか?
その背景には、自己組織化そのものに良いも悪いもないということ、そして特に人間の社会システムの中で考えた場合、自己組織化は(道徳的に、社会規範的に、あるいはビジネス価値などの観点からみて)良い方向にも向かえば、悪い方向にも向かうということがありそうです。それが「自己組織化だけじゃ不十分」という所以です。

Self-Organization と Self-Selection と Self-Direction

ここで、Self-Organizationに関連する言葉をいくつか挙げて整理をしておきましょう。

Term Description
Self-organized/self-managed The team organizes its own activities.
Self-selected/self-designed The team is self-organizing and creates and maintain itself.
Self-directed/self-governed The team is self-selected and there is no outside management.

(Table 6.1 Differences Between the Self-* Terms: "Management 3.0" p.107)
ここで言うSelf-directedは、Self-organizedの特殊な形と考えることができます。ここまで来ると、一見マネージャ不要に見えなくもないですね。でも、世の中にはSelf-directingな非合法組織などもありえるわけですし、アジャイル開発の文脈で見ても、Self-directingなチームができればいいのかというと、そういう単純な話でもないような気がします。

マネージャの役割はDeveloping/Protecting/Directing

そんな中で、マネージャの役割とはなんでしょう?
上で述べたように、自己組織化というのはそれ自体が太古の昔からあるもので、そもそもそっちの方がデフォルトであるとも言えます。ただそれ自体に良い/悪いという概念がないため、道徳・社会規範・ビジネス価値などの視点から有用な方向付けを行うために生まれたのがCommand and Control型のマネジメントや組織であると考えられます。
しかしながら、世の中のComplexityに対応していくためにはそれでは難しいということで、自己組織化が改めて見直されているというのがアジャイル開発への流れの中で見られる現象です。
そこでのマネージャの役割は、Command and Controlではない形で、組織における一種の制約を設けることだと考えられます。"Management 3.0"の中では、マネージャの3つの役割・責任として以下のようなものを挙げています。

  • One responsibility of a manager is the development of a self-organizing system.
  • A second responsibility of a manager is the protection of the system.
  • A third responsibility of a manager is defining the direction of the self-organizing system.

"Management 3.0" pp.152-155より抜粋)

まとめ

世の中の複雑性、Complexityに対応するための複雑適応系(Complex Adaptive System: CAS)としてのアジャイル開発およびそのための組織を考えた場合、その組織が自己組織化されていることが必要です。ただし、自己組織化された組織であればマネージャは不要か、というとそういうわけではありません。マネージャには、そのような自己組織化のシステムを作ること(Development)、そのシステムを守ること(Protection)、そしてその方向付けをすること(Direction)という重要な役割があることを忘れてはなりません。
そして、その際に最も重要なことは、「人ではなくシステム(系)をマネージせよ」(Manage the System, Not the People)ということです。

Management 3.0: Leading Agile Developers, Developing Agile Leaders (Addison-Wesley Signature Series (Cohn))

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