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アジャイルなマネジメントについて考える必要性(書籍 "MANAGEMENT 3.0")

"MANAGEMENT 3.0"は、2010年に出版されたJurgen Appelo氏の著作です。彼のブログ(Agile Management | NOOP.NL)が好きでよく目を通しているのと、slideshareで公開されている彼のスライド群の中でもこの本の内容に触れているものが多いため、すっかり原著を読んだ気になってしまっていましたが、改めて書籍を入手し、読みといています。

人によっては、「アジャイル・マネジメントって何それ?自己組織化されたチームで、マネージャが要らないのがアジャイルなんじゃないの?」という人もいるでしょう。確かに、Scrumのロールにプロダクトオーナーやスクラムマスター、開発チームはあっても、プロジェクトマネージャやマネージャといったロールは定義されていません。しかしながら、組織というものを考えるといずれにしても何らかの形でマネージャという存在が必要であるし、その存在を上手く活かすことが組織の中でアジャイル開発を進める上でのキーポイントになるというのが私の考えです。

私自身はアジャイル開発やScrumといったものに今までも関わってきましたが、立ち位置としては開発チームの一員ではなく、コーチやメンター的な立場、あるいはアジャイル開発を行う組織をマネジメントするという立場が中心です。そう言った意味で、この本の内容は非常に参考になりますし、深く考えさせられる部分も多いです。

アジャイルなマネジメントについて考える必要性

この本の中で著者も語っている通り、今までアジャイル開発に関する数多くの書籍が開発者やテスターやいわゆるプロジェクトマネージャ的な人向けに出版されているにも関わらず、ことマネジメントに関してそれに正面から向き合ったものはほとんどなかったのではないでしょうか。
一方で、よく言われるのが、「アジャイル開発の導入において、最も大きな障害の一つがマネジメントである」というような話です。いくら開発チームがアジャイルなやり方を取り入れ、推進しようとしていても、マネージャ層がこれからの時代にアジャイル開発チームの良さを引き出して企業価値を高めていくための新しい役割や取るべき態度・姿勢を考えていかなければ、その効果は限定的なものにならざるを得ないでしょう。

MANAGEMENT 3.0とは何なのか?

著者はMANAGEMENT 1.0から3.0を以下のように定義しています。

  • Management 1.0 = Hierarchies
  • Management 2.0 = Fads
  • Management 3.0 = Complexity

要するに、1.0は階層型組織におけるトップダウン型(場合によっては科学的管理とかコマンド&コントロールとも呼ばれる)のマネジメントであり、2.0は基本的な構造は1.0を引きずりながらその上にいろんなadd-onを載せたもの、そして3.0はこれまでとは全く違う複雑系の理論やホリスティックな考え方に基づくマネジメントであるということです。

なぜ複雑系の理論やホリスティックな考え方が重要なのか?

このことについては、著者が第1章のまとめに書いていることをそのまま引用したいと思います。

The human brain is wired to assume that every event has an identifiable cause. This is called causality and is useful for prediction and planning. However, quite often things are more complex than they seem. Complexity science teaches us that applying linear thinking to complex problems can lead to painful mistakes.
Although reductionism (understanding a system by understanding its parts) has been successful in science, it is now generally accepted that reductionism can be taken too far.
For understanding many complex problems, a more holistic view is needed, which is the goal of the study of social complexity. It offers a holistic view on whatever happens with group of people.
Management 3.0 is a model for Agile management, which applies complexity thinking to Agile software development teams.
("MANAGEMENT 3.0"/Jurgen Appelo p.14)

構成と内容

本書は、アジャイル開発と複雑系の理論についてそれぞれ1章を費やしたあと、Management 3.0のモデル(Martieという6つの目を持つ怪物みたいなもので表現されている)の組織に対する6つのビューを各2章ずつで説明するという構成になっています。そのエッセンスについては、概ね下のスライドにも盛り込まれていますので、これをさらっと見るとだいたいどういうことが書かれているのかつかめるかもしれません。

まとめ

で、何が言いたいのかというと、開発者やコーチなどを中心に「アジャイルサムライ」読書会(道場)が各地で行われているのを横目に、マネージャ層やリーダー層のみなさんと"MANAGEMENT 3.0"読書会とかやってみてもいいんじゃないか、と。洋書だし、そんなに規模は大きくせず、そこらのカフェかビアバーでw。とりあえずしばらくは、「ひとり読書会」やりながら、心に響いた部分や引っかかったところなどつぶやいたりブログに書いたりするかもしれません。

Management 3.0: Leading Agile Developers, Developing Agile Leaders (Addison-Wesley Signature Series (Cohn))

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