Always All Ways

Apologies, Glances and Messed Up Chances

書籍 "Agile for Managers" のベータ版

このブログでは今までしばしばマネジメント視点で見たアジャイル開発とかアジャイルな組織の話を書いています。その中でいくつかの書籍も紹介していますが、またちょっと気になる書籍が出版準備中との情報を見つけましたのでご紹介しておきます。しかも現在、ベータ版の原稿が無料でダウンロードできるようですので、これは読まない手はないですね。きっかけは、Kai Gilb氏のこのTweet:


この中のリンクからも直接pdfファイルがダウンロードできますが、書籍および著者の紹介のページがこちらにありますので、こちらからアクセスするのがよいでしょう。
Agile For Managers: Successful Teams That Deliver
f:id:tmaegawa:20120316100221p:plain

私も早速ダウンロードしたので時間を見つけて目を通してみたいと思います。

まだ本書の内容についてはなんとも言えませんが、いずれにせよ、このような書籍の出版などもきっかけにしてアジャイル開発やアジャイルな組織の文脈におけるマネジメントやマネージャについての議論が盛り上がるのはよいことだと思います。
関連エントリ:

リーンソフトウェア開発がいまだによくわからない

アジャイル開発というと、まず頭に浮かぶのがXP、Scrum、Lean、Kanbanあたりでしょうか。その中でも私は、リーン(Lean)がイマイチよくわかっていないのです。いやほんとに。確かにいろいろ書籍も出ていますし、インターネット上でも調べればその説明をしたサイトがたくさん出てきますので、その辞書的な説明を字面を追いかけてなんとなくそんなもんかというのはあるのですが、ほかの3つ(XP、Scrum、Kanban)と比べるとなんとなくレイヤーが違うというかスコープが違うというかちょっと靄がかかった向こう側にあるような感覚です。

リーン3部作も2冊目まではピンと来なかった

リーンソフトウェア開発と言えば、MaryとTomのPoppendieck夫妻の3部作が有名です。読んだ時期にもよるのかもしれませんが、「リーンソフトウェア開発」は読んだかどうかすら覚えていないし、「リーン開発の本質」も図書館で借りて読んだ記憶はあるものの内容のほとんどは恥ずかしながら右から左に抜けてしまっているようです。

でもとりあえずなんかわかったことにしておこう

そして僕は途方に暮れていたのですが、平鍋さんが書かれたブログの手描きの図を見て、「あぁ、そういうことか」ととりあえずわかったことにしておこうと思ったのが2009年秋の出来事。その平鍋さんの記事が、これです。
Agile から Lean への旅 -- UK Lean Conference を終えて:An Agile Way:ITmedia オルタナティブ・ブログ
それにインスパイアされて、自分のブログに雑文を書いたのが、これです。
Always All Ways: [IT] 近頃じわじわ来るものについての雑感
そして、ちょうどその頃にAllan Shallowayの"Lean-Agile Software Development"を読んだりなんかもしつつ、とりあえずわかったことにして某イベントで発表したりもしていました。

そして組織改革へ

そうこうしているうちに、リーン3部作の3作目とも言える「リーンソフトウェア開発と組織改革」が出版されました。これは、ちょうどアジャイル開発を進めるための組織とかに本格的に興味を持ち始めた時期でもあったため、じっくり読み、内容についても納得できるところが多かったです。
しかしながら、かと言って、リーンソフトウェア開発そのものが以前より理解ができたということではなく、別の観点での興味・理解であったように思います。

でもやっぱり知りたいし、仕事に有益であれば取り込みたい

というわけで、タイトルにもあるように、リーンソフトウェア開発というのがいまだによくわかっていません。でも、きっとちゃんと理解して仕事に取り入れられるようになれば、何かが変わるんだろうな、とは思っています。しかも、開発者視点だけでなく、企画やマネジメントをする立場、リーダーとしての立場でリーン原則をどう取り込んでどう活用していくかということを理解してみたいと思っていました。
問題は、いつどうやって?ということです。

Maryが来るよ(研修コースご紹介)

そんな私の気持ちを知ってか知らずでか(きっと知らなかったと思いますが)、Mary Poppendieckが4月に来日してワークショップ形式のトレーニングをやってくれるらしいです!
ということで、ここで(本題の?w)研修コースのご紹介です。
メアリー・ポッペンディーク「Leaders' Workshop (リーダーのためのワークショップ)」

  • 日付: 2012年4月9日(月)〜10日(火) :2日間
  • 時間: 10:00 〜 18:00
  • 開催場所: 株式会社豆蔵 トレーニングルーム ( 〒 163-0434 東京都新宿区西新宿二丁目1番1号 新宿三井ビルディング34階 )
  • 価格: 20万円 + PDU発行の場合は事務手数料5600円を申し受けます
  • PMI日本支部様のご協力により、PMP® 14PDU (カテゴリA) が獲得いただけます。
  • 主催: Poppendieck.LLC & アギレルゴコンサルティング株式会社

詳細は下記のリンク先をご参照ください。
メアリー・ポッペンディーク「Leaders' Workshop (リーダーのためのワークショップ)」 4月9日〜10日 (同時通訳付き) - アギレルゴコンサルティング株式会社
事前予習が必要なトレーニングのようですので、お早めのお申し込みが吉!

リーンソフトウエア開発?アジャイル開発を実践する22の方法?

リーンソフトウエア開発?アジャイル開発を実践する22の方法?

リーン開発の本質 ソフトウエア開発に活かす7つの原則

リーン開発の本質 ソフトウエア開発に活かす7つの原則

リーンソフトウェア開発と組織改革

リーンソフトウェア開発と組織改革

But...Self-Organization Is Not Enough: 自己組織化チームに関する誤解とマネージャの役割

アジャイル開発の文脈において、自己組織化されたチームという概念がよく出てきます。これはアジャイルなマネジメントを考える上でポイントとなる一つの大きな概念である半面、誤解(時によっては過大評価)されていたり、またそれが故にマネージャの役割が過小評価されているようなことも起きているのではないかと思います。

"But...Self-Organization Is Not Enough"というのはこのブログでも再三取り上げているJurgen Appeloの"Management 3.0"の第8章のある一節の見出しになっているフレーズです。この書籍では、第6章(The Basics of Self-Organization)でも1章を割いてSelf-Organizationの理論的背景や類似概念との比較などがされており、とても参考になります。このエントリでは、そこから私がポイントと思うところを適宜抜粋しながら、自己組織化について考えてみたいと思います。

自己組織化そのものに良いも悪いもないわけで…

まず、自己組織化のそもそもの意味はなんでしょう?Wikipediaを見ると以下のような説明がされています。

自己組織化(じこそしきか、Self-organization、Self-assembly)とは、自然と秩序が生じて、自分自身でパターンのある構造を作り出して、組織化していく現象のことである。自発的秩序形成とも言う。自己組織化は、身近な自然現象の中に潜んでいて、幾何学的な形状を持つ雪の結晶の成長や、孔雀の羽に浮かび上がるフォトニック結晶構造に由来する模様や、シマウマのゼブラ模様、心臓の鼓動など、さまざまなものの中に見出すことができる。生物がDNAを設計図として、自ら機能を持った組織をつくり出す現象も、高度な自己組織化の結果と考えられている。
自己組織化 - Wikipedia

つまり、生命の誕生からなにからして、自己組織化というのは自然界に自然に現れるものであり、別に特殊なものではないということですかね。ならばなぜ、アジャイル開発でこれほど「自己組織化」ということがあたかもそれがベストプラクティスの一つかのように語られたり特別視されたりするのでしょう?裏返せば、なぜそれに相対するようなCommand and Control型のMicro Managementが世の中にはびこっているのでしょうか?
その背景には、自己組織化そのものに良いも悪いもないということ、そして特に人間の社会システムの中で考えた場合、自己組織化は(道徳的に、社会規範的に、あるいはビジネス価値などの観点からみて)良い方向にも向かえば、悪い方向にも向かうということがありそうです。それが「自己組織化だけじゃ不十分」という所以です。

Self-Organization と Self-Selection と Self-Direction

ここで、Self-Organizationに関連する言葉をいくつか挙げて整理をしておきましょう。

Term Description
Self-organized/self-managed The team organizes its own activities.
Self-selected/self-designed The team is self-organizing and creates and maintain itself.
Self-directed/self-governed The team is self-selected and there is no outside management.

(Table 6.1 Differences Between the Self-* Terms: "Management 3.0" p.107)
ここで言うSelf-directedは、Self-organizedの特殊な形と考えることができます。ここまで来ると、一見マネージャ不要に見えなくもないですね。でも、世の中にはSelf-directingな非合法組織などもありえるわけですし、アジャイル開発の文脈で見ても、Self-directingなチームができればいいのかというと、そういう単純な話でもないような気がします。

マネージャの役割はDeveloping/Protecting/Directing

そんな中で、マネージャの役割とはなんでしょう?
上で述べたように、自己組織化というのはそれ自体が太古の昔からあるもので、そもそもそっちの方がデフォルトであるとも言えます。ただそれ自体に良い/悪いという概念がないため、道徳・社会規範・ビジネス価値などの視点から有用な方向付けを行うために生まれたのがCommand and Control型のマネジメントや組織であると考えられます。
しかしながら、世の中のComplexityに対応していくためにはそれでは難しいということで、自己組織化が改めて見直されているというのがアジャイル開発への流れの中で見られる現象です。
そこでのマネージャの役割は、Command and Controlではない形で、組織における一種の制約を設けることだと考えられます。"Management 3.0"の中では、マネージャの3つの役割・責任として以下のようなものを挙げています。

  • One responsibility of a manager is the development of a self-organizing system.
  • A second responsibility of a manager is the protection of the system.
  • A third responsibility of a manager is defining the direction of the self-organizing system.

"Management 3.0" pp.152-155より抜粋)

まとめ

世の中の複雑性、Complexityに対応するための複雑適応系(Complex Adaptive System: CAS)としてのアジャイル開発およびそのための組織を考えた場合、その組織が自己組織化されていることが必要です。ただし、自己組織化された組織であればマネージャは不要か、というとそういうわけではありません。マネージャには、そのような自己組織化のシステムを作ること(Development)、そのシステムを守ること(Protection)、そしてその方向付けをすること(Direction)という重要な役割があることを忘れてはなりません。
そして、その際に最も重要なことは、「人ではなくシステム(系)をマネージせよ」(Manage the System, Not the People)ということです。

Management 3.0: Leading Agile Developers, Developing Agile Leaders (Addison-Wesley Signature Series (Cohn))

Management 3.0: Leading Agile Developers, Developing Agile Leaders (Addison-Wesley Signature Series (Cohn))

アジャイル開発へのミーム学的アプローチ

アジャイル開発における知識やルールの伝播などについて、利己的遺伝子で有名なリチャード・ドーキンスの「ミーム」に例えることは、それほど新しい話ではありません。

私自身はまだちゃんと読んでいないのですけれども、古くは、2002年(原書は2001年)のアリスター・コーバーンの「アジャイルソフトウェア開発」ミームに関する記述が出てきているようです。原書のドラフト版などがネットにPDFでありましたので、興味のある方はどうぞ。
http://zsiie.icis.pcz.pl/ksiazki/Agile Software Development.pdf

さらにその後、Philippe Kruchten氏がMemeplex(ミーム複合体)にも言及して、よりコンテキストに着目した記事を書いたりもしています。
Voyage in the Agile Memeplex - ACM Queue

このような、アジャイルにおけるミーム学的なアプローチというのは特にアジャイルな組織のマネジメントや組織改革を考えていく上では非常に面白い考え方だと思います。そんな中で、このブログでもよく取り上げているJurgen Appelo氏のManagement 3.0でも、第10章でミームミーム複合体の話が出てくるので簡単に紹介したいと思います。

アジャイルソフトウェア開発はミーム複合体である

互いに依存するミームの集合体をミーム複合体(memeplex)と呼びます。ダーウィン進化論的に言えば、ミームが寄り集まってミーム複合体を形成するのは、その方が自身を複製する成功確率が高くなるからです。
ここで、アジャイル開発における個々のプラクティスをミーム、そしてそれらをパッケージングしたScrumだとかXPだとかKanbanだとかをミーム複合体と考えてみましょう。ご存知の通り、個々のプラクティス自体はアジャイル開発云々以前から存在していたものも多いと思います。しかしながら、それらのプラクティス自体がミームとして世の中に伝播していくのはかなり限定的であり、現在これだけアジャイル開発が世の中に広まっているのは、やはりそれがアジャイル開発としてScrumだとかXPだとかKanbanだとかといったブランド(?)名のもと、ミーム複合体を形成したことによるものが大きいと言えます。

そう考えるとどんなことが見えてくるか

Jurgen Appelo氏はこのあたりの話を本にまとめるまえに自身のブログでその草稿に近いものを書いています。
The Success of the Agile Memeplex - Agile Management | NOOP.NL
そこから、アジャイル開発をミーム複合体としてみた場合に見えてくる5つのポイントをそのまま引用したいと思います。

  1. It can be easier to get people to adopt multiple ideas, concepts or practices simultaneously, then it is to have them adopt just one. (For example: teaching them to apply Extreme Programming instead of only unit testing);
  2. In a memeplex not all ideas, concepts and practices need to be beneficial. In fact, some of them can be harmful. But because they are all part of the same memeplex, the bad ideas help the good ideas to be copied around as well, which neutralizes the bad effects. (An example which might be on dangerous ground: I have seen no conclusive evidence of the value of collective code ownership, but this practice seems to reinforce the other agile practices, so it won’t hurt copying it along as well);
  3. Removal of individual memes from the memeplex may weaken, or even destroy, the strength of the memeplex. (Example: removal of collective code ownership might lead to an agile adoption breaking down completely);
  4. There may exist multiple competing memeplexes that reinforce and need each other because their competition draws attention away from alternatives. (Example: competition between XP, Scrum, and Kanban within the Agile world draws attention to the agile brands in general);
  5. Memes may have different origins, and can even be exchanged and shared across multiple memeplexes. (Example: user stories started as a meme within XP, but are now firmly locked into the Scrum paradigm as well).

http://www.noop.nl/2010/02/the-success-of-the-agile-memeplex.html

まとめ:組織へのアジャイル導入における示唆

アジャイルな開発を組織に導入する際によく議論になるポイントとして、「Scrumでやるよ」みたいな感じで始めた方がいいのか、とりあえずいくつかのプラクティスからできる範囲で少しずつ導入していくのがいいのか、というのがあります。また、Scrumを導入するとして、最初からフルセットでやらなきゃいけない(いいとこ取りのいわゆるCherry Pickingはよくない?)のか、それもできるところから…でよいのかという話もよく出てきます。
上で紹介した、 ミームミーム複合体の話から考えると、ミーム単体(個々のプラクティス)よりもミーム複合体(たとえばScrum)の方が強力であり導入の成功確率も高いと考えた方がよいでしょう。
但し、JurgenもManagement 3.0の中で語っていますが、これは必ずしも「トップダウンでビッグバン的に導入する」ことを意味するわけではありません。ミーム複合体としてのScrumを導入するからといって、それが「全てのミーム(プラクティス)を同時に」導入しなくてはならないというわけではないということです。概念として大きな固まりで捉えること、そしてそれを伝えていくことは重要ですが、個々のプラクティスの導入時期や順序などは、それこそその組織のコンテキストに応じて、というのが正しいアプローチではないかと思います。

アジャイルソフトウェア開発 (The Agile Software Development Series)

アジャイルソフトウェア開発 (The Agile Software Development Series)

Management 3.0: Leading Agile Developers, Developing Agile Leaders (Addison-Wesley Signature Series (Cohn))

Management 3.0: Leading Agile Developers, Developing Agile Leaders (Addison-Wesley Signature Series (Cohn))

Lulu.comで「世界を変える方法」を買ってみた

旧ブログでの以前のエントリーで、Jurgen Appelo氏のChange Management 3.0について紹介しました。
Always All Ways: [IT] Change Management 3.0

その後、彼がその内容を小冊子にまとめてLulu.comで自費出版したということを知り、早速買ってみました。

Lulu.comとは?

Lulu.comは、米国のLulu Enterprise, Inc.の提供する自費出版サービスです。
ルルエンタープライズ - Wikipedia
ちょっと日本語での情報を検索してみましたが、2008年頃にちょろっと日本語の記事が紹介されている程度であまり話題にはなっていないようですね。
セルフパブリッシングビジネスの真の夜明けは来るか | ワイアードビジョン アーカイブ

How to Change the World

今回購入したのは、Jurgen Appelo氏の"How to Change the World"という87ページの小冊子的な読み物です。PDF形式のダウンロード販売のみで、定価$2.01(今回はクーポン利用で$1.61)というお手頃価格です。
How to Change the World by Jurgen Appelo in Zelfontwikkeling
最初に書いたように、内容については以前のブログで紹介したプレゼンテーションやビデオ等でカバーされている内容の焼き直しに近いですが、書籍(小冊子)化を意識して、さまざまな補足説明も詳細に書かれており、興味のある人は読んでみることをおすすめします。

Agile導入の障壁を乗り越えるために

この小冊子を出すに至った経緯や背景については、著者が自身のブログに書いています。
How to Change the World (download the book!) - Agile Management | NOOP.NL
その中でも述べられていますが、VersionOne社の実態調査を見てわかるように、アジャイルのさらなる導入の障壁の第1位は、"Ability to change organizational culture"、そして第3位には"General resistance to change"が入っています。(Jurgenのブログでは2010年版を参照しているらしく、1位と2位と書いていますけれども。)
その障壁を乗り越えるためのヒントが、この小冊子の中に詰め込まれていると思います。

仕事帰りにドラムサークルすると何が起きる?

イベントのお知らせ/ご紹介です。

岡山出身で現在は都内を中心に精力的にライブ活動を行っているピアニストの妹尾美穂さんが裏の別の顔であるドラムサークル・ファシリテータとして、平日夜に異業種交流的な(婚活も?)ドラムサークルをどどーんと開催しちゃいますよ!

「ドラムサークルって何?」とか「楽器なんて経験ないんだけど…」とか「どんな人が集まるんだろう?」……いろいろ考えることもあるかもしれませんが、難しいことは考えずにまずは体験してみましょう。

イベント概要

  • 日時: 2012年4月9日(月)20時〜
  • 会費: 2500円(ドリンク別 600円〜 ソフトドリンク/お酒あり)
  • 会場: ホオキパ

     http://www.hookipa.jp/
     〒106-0032
     港区六本木5-18-21 ファイブプラザビルB1

私の興味領域とドラムサークル

上で「難しいことは考えずに」と書いておいてなんなんですが、イベント紹介だけでは芸がないので、私自身がどういう視点でドラムサークルに興味を持っているかということについて簡単に触れておきたいと思います。

まずドラムサークルの効用だとか、セロトニンの分泌との関係だとかについては各種書籍やウェブサイト等でもいろいろ出ていますので興味があれば検索してみてください。

そんな中で私自身がここ1〜2年ほど興味深く見ているのが、DCFA(ドラムサークルファシリテーター協会)理事長でもあり、日本のドラムサークルの第一人者でもあるペッカーさんと神戸大学金井壽宏先生の交流であり、その活動です。
金井先生と言えば、私は野田智義さんとの共著の「リーダーシップの旅」が好きなのですが、このブログの読者のみなさんの中には、岸良裕司さんとの共著の「過剰管理の処方箋」を読まれた方も多いのではないでしょうか。私自身は金井先生とは直接面識はありませんが、ペッカーさんから金井先生のお話をお聞きしたり、お二人のtwitterでのやりとりを拝見している限りでは、人勢塾でのリズム関連での取り組みとかタックマンモデルとの関係性とか結構わくわくするようなことが語られていて非常に興味深いです。
例えば、こんな感じ↓

私自身はドラムサークルに関しては、たま〜に一参加者として参加してストレス発散している程度なので偉そうなことを語る資格などないのですが、そんな私から見ていても、今年から来年にかけては、ドラムサークルのような活動がビジネスや経営の領域でも本格的にググーっと存在感を増してくるのではないかという気がしています。なんとなくね。

リーダーシップの旅  見えないものを見る (光文社新書)

リーダーシップの旅 見えないものを見る (光文社新書)

過剰管理の処方箋 自然にみんながやる気!になる

過剰管理の処方箋 自然にみんながやる気!になる

書籍「民俗のふるさと」(宮本常一)

二人の常一

以前、「二人の常一」という表現をしたのは誰だったでしょうか。確かに私の周りでよく聞く常一という名前の人物には二人が存在します。一人は、宮大工の西岡常一(つねかず)、そしてもう一人が今回取り上げる書籍を書いた民俗学者の宮本常一(つねいち)です。今回、改めてリンクを貼るためにWikipediaを見て気がついたのですが、西岡が1908年生まれ、宮本が1907年生まれということで年齢も非常に近いのですね。
西岡棟梁についても、私が社会人になって間もない頃に「木に学べー法隆寺・薬師寺の美」を読んで、えらく感銘を受けたのですが、今日は、そちらではなく、宮本常一の本について書きます。

宮本常一と父の教え

宮本常一と言えば、主にIT系の方で羽生田さんの話を聴いたことのある人たちは、「あぁ、あの十箇条の餞の言葉を父からもらった人ね」、ということで記憶されているのではないでしょうか。私自身も最初に宮本常一のことを聴いたのは、羽生田さんの講演でした。宮本常一がこれほどまでにIT系のコミュニティ界隈の人々に認知度が高いのは、羽生田さんの功績と考えて間違いないでしょう。
しかしながら、一方で「宮本常一=父の教え10箇条」止まりで、実際に著作を読んだ人というのはそれほど多くないのではないでしょうか。実は私も、せめて「民俗学の旅」「忘れられた日本人」くらいはいつか読もうと思いつつ手に取ることもなく今に至っています。ちなみに、その2冊については、棚橋弘季さんがブログに詳しい書評を書かれています。それを読むと、宮本常一という人物がどういう人物かとかそれぞれの本にどんなことが書かれているのかがわかったような気になれるかもしれません。
民俗学の旅/宮本常一:DESIGN IT! w/LOVE
忘れられた日本人/宮本常一:DESIGN IT! w/LOVE

民俗のふるさと:命令せられないであふれ出るエネルギーの根源

そんな中でつい最近、「民俗のふるさと」河出書房新社から文庫化されて出版されたようですので、早速購入して読んでみた次第です。

前置きが長くなりましたが、本題です。まず、本書がどんな内容なのかというのを裏表紙から拾ってみると、

日本に古くから伝えられている生活文化を理解するには、まず古いものを温存してきた村や町が、どのように発達して今日に到って来たかを知っておく必要がある、という視点から具体的にまとめられた、日本人の魂の根底に遡る生活空間論。町と村の実態調査からコミュニティ史を描く宮本民俗学の到達点。

となっています。

本編自体には、町や村の成り立ちや仕組み、その中で生きる人々や慣習などがさまざまな切り口で記述されていきます。読みながら気になる部分を引用しながら感想を述べてみようかとも思いましたが、ちょっとそれは断念して、あとがきの中から2箇所ほど引用してみたいと思います。

…そうした慣習や行事は、時にはたいへん大切にされることがあるかと思うと、時にはお粗末にされ、またこれを消してしまおうとする努力の払われることもあるが、生活の中にしみこんでいるものとして、日常のなんでもない行為や物の考え方の中に生きていることが多い。

それが時にはわれわれの生活文化を停滞させることもあるが、誰に命令されなくても自分の生活を守り、発展させるためのエネルギーにもなる。ほんとの生産的なエネルギーというものは命令されて出て来るものではない。…

著者もあとがきの別のところで述べているように、こういった力が日本が敗戦から立ち直るのにつながったかもしれませんし、また、今回の震災あるいは過去何度となく日本を襲った震災からの復興を奥底から支えていたのかもしれません。3.11を迎えるにあたって、改めて「命令せられないであふれ出るエネルギーの社会的な根源」について考えてみるきっかけになる一冊だと思います。

民俗のふるさと (河出文庫)

民俗のふるさと (河出文庫)